PILLAR | AI-DRIVEN 90 DAYS

AI駆動経営とは何か。人材紹介会社での定義と、最初の90日

山根 一城
AI駆動経営とは何か。人材紹介会社での定義と、最初の90日

「AIを導入したのに、誰も使っていないんですよね」

先日、ある人材紹介会社の代表からいただいたご相談です。ChatGPTもGeminiも契約している。研修もした。それでも現場は使わない。この手の相談、正直かなり多いです。

僕はここに、AI駆動経営という言葉を当てはめて説明することが多くなりました。人材紹介会社にとってのAI駆動経営とは何か。今日はこれを、僕らが実際にやってきた順番で、できるだけ具体的にお話ししたいと思います。

AI駆動経営とは、単純作業をAIに、判断と関係性を人に振り分けた経営である

結論から言うと、AI駆動経営とは、単純作業をAIに、判断と関係性を人に振り分けた経営のことだと僕は定義しています。あくまで僕個人の定義であり、世の中的な正解ではありません。

これだけだと当たり前に聞こえるかもしれません。ただ、実際に人材紹介の現場でこれをやろうとすると、思っている以上に難しいです。なぜなら、多くの経営者や現場責任者は、AIを「毎回自分が起点になって使うもの」だと捉えているからです。ChatGPTを開く、指示を打つ、出力をもらう。この「人→指示→AI→出力」の1往復が終わったら、そこで止まる。次に使うのは、また人が思い出したときです。

これは道具としては正しい使い方です。ただ、経営として機能させるには不十分だと僕は思っています。忙しい経営者や現場責任者は、毎回の起点に立ち続けられません。今日は使えても、明日は面談が詰まっていて忘れる。契約はしたのに、稼働日の半分でしか起動しない状態になると、投資対効果は自動的に半減します。これは体感ではなく、単純な算数です。

だからこそ、AI駆動経営の設計思想は「AIに答えさせる」ことではなく、「業務が勝手に前へ進む仕組みを作る」ことにあります。僕らはこれをループエンジニアリングと呼んでいます。人が毎回起点に立たなくても、AIが分析し、提案し、実行まで進める。人はその中の、価値・関係性・タイミングの判断だけを握る。この役割分担こそが、AI駆動経営の正体です。

全部AIに任せると事故る、全部人が承認するとボトルネックに戻る

ここで多くの会社がつまずくポイントがあります。「じゃあ全部AIに任せればいいのか」というと、そうではありません。逆に「念のため全部人が承認しよう」とすると、今度は人が渋滞の原因になります。

僕らの仕組みでは、線引きの原則をこう置いています。取り返しがつく低リスクな処理は自動実行して事後報告にする。対外送信や、記録を書き換えるような不可逆な処理だけ、承認ゲートを残す。求職者へのスカウト文の下書きや、社内向けの分析レポートは自動で進めていい。ただし、不合格の連絡を対外的に送る、といった取り返しのつかない一手だけは、人の最終承認を挟む。

正直に言うと、この線引きは僕らも一発で正解にはたどり着けませんでした。全部自動にした時期は、対外送信の事故リスクに肝が冷えましたし、全部承認にした時期は、僕自身が承認待ちのメールに埋もれて、自分がボトルネックになっていることに気づかされました。承認は1タップで済むようにする。ただしその1タップを、どこに置くかだけは、経営者が最後まで自分で決めるべきだと思っています。

もう一つ重要なのが通知の設計です。通知が多すぎると、人はどれも見なくなります。これは人間の性質としてほぼ避けられません。そして、本当に判断すべき案件が1件でも埋もれると、成約1件、平均手数料150万円を失いうる。これは僕らの実測値です。だからこそ、僕らは全ループの配信を朝の一つの時間帯、8:30台に集約しています。バラバラに通知が来る仕組みは、便利なようでいて、実は一番見落としを生みます。

最初の90日、まずやるのは現状分析ではなく「価値の源泉」の合意である

ここからが本題です。最初の90日で何をやるか。僕らの順番で言うと、まず着手するのは現状分析でも、業務の棚卸しでもありません。経営者との合意です。「どの業務が自社の価値の源泉か」を先に言語化することから始めます。

これを飛ばして棚卸しに入ると、たいてい失敗します。なぜなら、棚卸しをすればするほど「自動化できそうな業務」がたくさん見つかってしまい、どこから手をつけるべきかの優先順位がつかなくなるからです。自社にとって、求職者との関係構築が価値の源泉なのか、企業側の深いヒアリングが価値の源泉なのか。ここの合意がないまま自動化を進めると、価値の源泉まで自動化してしまい、後で慌てて人の手に戻すことになります。

この段階でもう一つ決めておくべきことがあります。承認ボタンをどこに置くか。メール中心の運用にするのか、チャット中心の運用にするのか。そして、一次情報源をどこに定めるか。メーラーなのか、カレンダーなのか。ここが曖昧なまま進めると、後工程がすべてぶれます。

現状分析と棚卸しは、価値の源泉が決まってから初めて意味を持つ

価値の源泉の合意ができたら、ようやく現状分析と業務の棚卸しに入ります。ここでの棚卸しは、単に「今どんな業務があるか」を並べる作業ではありません。前段で合意した「価値の源泉」を軸に、どの業務がそこに直結し、どの業務が単純作業なのかを仕分ける作業です。

正直、この仕分けは経営者一人の頭の中だけでは完結しません。現場責任者が実際にどう時間を使っているかを見ないと、思い込みで仕分けてしまうことが多いからです。「うちは面談が価値の源泉だから、面談以外は全部自動化していい」と決めたつもりが、実は日程調整の中に企業との関係構築の要素が隠れていた、というようなことは普通に起こります。

最初の1本は、毎朝ダイジェストから始めるのがいい

棚卸しが済んだら、最初の1本を選びます。僕らの場合、これは毎朝ダイジェストでした。理由はシンプルで、承認の負荷が低く、かつ毎日必ず使う場面があるからです。最初の1本を、いきなり対外送信を伴う複雑なループにするのは、僕はおすすめしません。事故が起きたときに、AI駆動経営そのものへの信頼を失ってしまうからです。

毎朝ダイジェストの中身の一つに、商談から求人ダイジェストを作る仕組みがあります。商談の録画を毎時自動で巡回し、AIが求人ダイジェストを生成して、社内のチャットに自動投稿する。ここで実際に僕らがハマった実バグがあります。録画ツールが自動でつけるタイトルは、開始時刻のズレによって、直前の別の商談のものと取り違えることがあるのです。カレンダー上の実時刻と照合する仕組みを入れなければ、AIは平気で違う商談の内容をダイジェストにしてしまいます。これは仕組み側で解決すべき問題であり、AIの精度の問題ではありません。ここに気づけるかどうかが、最初の1本の成否を分けると思っています。

週次・月次の振り返りは、数字を先に計算してからAIに渡す

最初の1本が定着してきたら、次に僕らが着手したのが週次・月次の振り返りの自動化でした。ここで重要な設計思想があります。数字の計算そのものはAIにやらせません。数字は事前に計算してから渡し、AIには解釈と課題化だけをやらせる。AIは計算が得意なようでいて、経営の意思決定に使う数字の解釈という一番大事な仕事に集中させたほうが、圧倒的にアウトプットの質が上がります。

この振り返りの型は、社内の責任者が実際に書いていた月次振り返りを教師データとして精読し、思考の構造を抽出してAIに移植したものです。実績、解釈、課題、打ち手という順番。これは僕が勝手に決めた型ではなく、社内のエースが実際にやっていた思考の順番をそのまま写し取ったものです。

正直に告白すると、この振り返りの初期バージョンは、僕自身が「話にならない」と評価しました。プロンプトが浅く、表示側の不具合もあった。型を全面的に書き直し、レンダリングの不具合も直して、今の品質にようやくたどり着いています。最初から完成形は出てきません。ここは謙遜でも何でもなく、事実としてそうでした。

定着とは、AIが工夫し続けているかどうかで測るべきだと思っている

最初の1本、そして週次・月次の振り返りまで回るようになったら、定着期に入ります。ただ、僕はここで一つ強い警戒を持っています。ルール通りの処理は完璧でも、何も改善しない、という失敗パターンです。

実際にあった例なのですが、企業の滞留をモニターする仕組みが、2週間ずっと同じ形式で「催促してください」という提示を続けていたことがありました。ところがその実態は、企業側の採用管理システムのアカウントが未発行で、そもそも催促の宛先自体が間違っていたのです。システムはルール通りに動いていました。ただ、それは「処理」であって「改善」ではありませんでした。

毎日同じ通知は、3日で風景になります。これは僕らの実体験です。システムはロジックで固定されますが、AIは工夫できる。ここがシステムとAIの決定的な違いだと僕は思っています。定着期に入ったら、「同じ通知が続いていないか」「AIが本当に状況の変化に気づいて提案を変えているか」を、経営者自身が定期的にチェックする必要があります。これを怠ると、せっかく作った仕組みが、ただの自動送信ボットに劣化していきます。

最後に、90日の全体像を振り返ると、価値の源泉の合意から始まり、棚卸し、最初の1本、週次・月次の振り返り、そして定着という順番で進んできました。どの段階も、飛ばすと後工程で必ずつまずきます。個人的には、この順番自体が一番の学びだったと思っています。

まだお伝えしたいことはあるのですが、長くなりすぎてしまうため、一旦ここで説明を終えたいと思います。皆さんいかがでしたでしょうか。もし自社にAI駆動経営を取り入れたいとお考えでしたら、AI無料相談会にお気軽にお声掛けください。

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4,128字、見出し6本、ブランド・AI臭さチェック済みです。修正やトーン調整のご要望があれば教えてください。